作戦2
「副長が…死んでしまいます…っ」
走ってきてとにかくすぐに銀時に伝えた言葉は、確かこうだった。
銀時にもその瞬間はっきり理解できなかった。
内容が、あまりにも、あまりにも、だったから。
「は;?多串くんが?」
かなり間を空けて言えたのはこんな言葉だった。
信じられない、正直そんな考えが初めに立った。
だってさ、死ぬ、だよ?
あんな鬼みたいな目をした男が死ぬ?
地球が滅びたって自分だけは生きてそうなそんな男が、死ぬ?
「誰かに刺されたとか?」
浮かんだ原因はそれだった。
真選組は何かと敵視されやすい。
実際、桂達もいつか首を取ろうと思っているはずだ。敵は五万と居る。
しかし山崎は首を横に振った。
「とにかく屯所まで来てください。」
屯所には過去に何度か入ったことがある。でも今日の様子はいつものそれと違った。
静か。
一言で言えばそうだった。
見張りは立っているが皆いつもにまして表情が堅い。
渡り廊下から見える庭には誰も居ない。
廊下を行き来する人間も居ない。
とても、静かだった。
「こちらです」
山崎が案内したのは土方の自室だった。
銀時も何度か入ったことのある部屋だ。
「失礼します」
山崎がゆっくり障子を開く。
10畳ほどの部屋の中央に1組の布団。軽く上下しているが、山崎の声に反応した様子は無い。
枕に乗った頭は黒髪…土方だ。
山崎に促されて布団の近くに座る。
「…そのうち起きると思うんでちょっと待っててください」
「…他の連中は?」
「土方さんがこの状態ですから。みんな手分けして仕事片付けてます。何だかんだいって土方さんが事務的なことから労働面まで一手に処理してましたから」
「そっか」
「お茶でも入れてきます」と山崎が立ち去った後
一人取り残された銀時は目の前で眠る土方をぼんやり見ていた。
こうしているとただ寝ているだけのように見える。
でも山崎は「死んでしまう」と言った。
「斬られた…とか」
疑って布団をめくって見るが、血の跡も、包帯も無い。
ということは
「病気…?」
そういえば見慣れぬ装置が1つ枕元においてある。
それは土方の腕につながっているようだ。
銀時は今まで見なかった、いや怖かったのかもしれないが、見ていなかった土方の顔を見た。
その顔は1週間前見たものではなかった。
目の下は窪んで青くなっている。
唇は紫に変色している。
肌は普段の健康的な色を完全になくしていた。
「……」
初めて「死んでしまう」と言った意味がわかった気がした。
どうみたってこりゃ相当悪い。
荒い呼吸をしている様子はないが苦しむような病気ではないのかもしれない。
「何で…1週間前はけろっとしてたじゃん…」
土方が最後に見せた顔からは想像がつかないほど変わっている。
そのギャップが銀時の不安を更に煽る。
「…何だ、来てたのか」
銀時がふと目を反らした時、血色の悪い切れ目が銀時に話しかけた。
病気…だねぇ。ははは。
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