作戦3

「何だ来てたのか…起こせばいいだろう」

いつものキレが無い、覇気の無い声で、土方は言った。

「…あんまり、気持ちよさそうに寝てたから。顔に落書きでもしてやろうと思って」

ひとボケして笑ってやろうと思った。
でも、一言発しただけで疲れたように溜息をつく土方を見て作ろうとした笑顔も強張るばかり。
いつもの心地よいキレのあるツッコミは、ない。

土方がゆっくりとこちらに顔を向けた。

「…山崎に連れてこられたんだろ?」
「ぁ…うん。まぁ」
「ったくあいつ…。お前には伝えなくてもイイって言ったのによ…」

ピクッと頬が引きつる。

「…何で?言ってくれりゃいーじゃん。何で俺には言わなくてイイと思うんだよ」

違う。
違う。
――こんなことで責めたいんじゃない。相手は病人だぞ。何言おうとしてるんだ俺。

銀時はぐっと言葉を押し込めて俯いた。
土方がじっと見ている。

何だよ、さっきの…あれじゃまるで――

「…別にお前には、俺がどうなろうと関係ないだろ?」

ダルそうに土方が体を起こす。
そして脇に置いてあるタバコを何気なく取って火をつけようとした。
――が。

「…ダセェな…」
「……」

大袈裟な程に、ライターを持つ手が震えていた。
結局その手はタバコに火をつけることが叶わず布団に落ちる。
口からぽと、とタバコも落ちた。

「…話せよ。何でそんな弱くなってんだよ…」
「……癌だってよ。肺癌。」

銀時の返事は無かった。
枕元に置かれた見慣れぬ機械。
顔色の悪い土方。
山崎の言葉。

死んでしまう――癌で。

「…どれくらい?」

友人として、そこは動揺すべきだったのだろうか。
しかし銀時の心は静かだった。

死、というものに慣れているからかもしれない。不本意ながら。

「医者は、もって半年。悪ければ1ヶ月もたないと」
「そっか」
「ああ。」
「てゆーか癌告知されといてよくタバコ吸おうとするね」
「もう死ぬって決まってるんなら自由にさせてくれって医者に言ったんだよ。医者も了承済みだ」
「なるほどね、土方らしいな」
「だろ?」
「うん」
「……」
「……」

それから暫くは沈黙が続くだけだった。

山崎がお茶を持って来たときに「帰るわ」と銀時が立ち上がった。

「え;もう帰るんですか;?」

土方と銀時が両思いだと信じて疑わない山崎は必死に銀時を止めようとしたが
銀時は「ココに居たって出来ることないからさ」と断って屯所を出て行った。


暗いけど…次は。
20050728UP

 





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