ムゲン4

――只今、朝7時半。

土方は、迷っていた。

「(どうする…起こせって言われたが…完治してるわけがねぇし…。こんな状態で帰らすのって酷じゃねぇか…?)」

他人に世話になっている手前、強がって言ったのかもしれない。
だいたいこの寒い中、熱のある人間を家から追い出すなんて非常識だと思う。
しかし、目の前のこの人間と、1時間前に起こす約束をしてしまった。
それを破る勇気も、正直ない。

「(だが…)」

プルルルル…

「!やべ…っ;」

携帯が鳴っている。
土方は慌てて自分の携帯を懐から引っ張り出した。

「あ…?俺のじゃねぇ…?」

と、いうことは。

「…オイ。オイ。」

銀時の体を揺さぶる。

「んー…」

鳴っているのはおそらく銀時の携帯だ。よく聞くと体の辺りから音がする。
しかし、電話の持ち主はいくら体を揺すろうが起きる様子はない。

――起こせといいながら、コレはねーだろ…

「オイ!」
「んんー…?」

ゴロンと寝返りをうってコチラに体を向けると、ちょうどコロンと胸元から携帯が床に落ちた。
プルルル、とまだ携帯は持ち主を呼んでいる。

「…ちっ…」

仕方なくそれを手に取ると勝手ながら通話ボタンを押した。

「…もしもし。」
『…?てめぇ誰だ』

土方の耳に入ったのは低い男の声。

「悪い。持ち主は熱で今寝てる。代わりに出た。」
『……熱?……そうか。悪かったな』

その男はあまり疑問も抱かず、
謝罪の言葉を返してきた。
まるで保護者、のような…。

――コイツ…もしかして…

――「んー…”逃げてた”から。」
――「…”逃げてた”…?誰からだ?」
――「…怖ぁいヒト。」

――話に出てきた奴か…?

『すぐ迎えを寄越す。場所を教えてくれ。』
「……」

どうする。
教えていいものか。
もしコイツが銀時の言う「怖いヒト」だとしたら?
わざわざ引き渡すようなことをしていいのか?
しかし銀時は「俺が逃げられるのは、半日が限界なんだよ」とも言っていた。
あれは…どういう意味だったのだろう。

『…おい?』
「あ…あぁ、悪い。」

どうする。

「場所は…」

どうする。

「…白銀だ。住所は…」



『わかった。すぐ行く。』

携帯を閉じる。
白銀は、歌舞伎町の南にある。住所も出たら目だ。以前の女の居た住所。
もちろん今は住んでいないはずだ。

結局、土方は銀時を自分の元に置くことにした。
熱が下がるまでは、と自分に言い聞かせて。

「(本当は、そんな理由じゃねぇ…わかってるさ)」

何とかしてやりたい。

そう思ったからだ。
何故そう思ったか。理由はわからない。
しかしこのまま帰すことは、おそらく銀時にとっては、本当は喜ばしいことではないのだろう。
――”逃げたい”
銀時はそう、言った。
少し家出をする程度ならこんな言い方はしないはずだ。

何かある…その理由は…?

「…熱が下がったら…教えろよ?」

もう一度、銀時の額に手を当てる。

本当に自分はこの熱を下げてほしいのか…

そんな疑問を、何度も打ち消しながら、
その目が開かれるのを、待っていた。

この選択が、本当はとんでもない、出過ぎた真似だったことを思い知らされるのは、

これから3時間後のことだった。


さぁ何があったんでしょーねィ。(ムフフ)
次回に続く!
20051028UP


 






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