ムゲン23

嘘だろ?そんなはずがない。
アイツから電話がかかってくるはずがない。
番号なんて教えてない。
それに、今頃まだ傷が癒えずに寝ているはずだ。
いや、でも。
それでも。
この声は――

『…やっと出た。もう一回コールが鳴ったら切ろうと思った。』

「…ぎ、んとき、か…?銀時か…ッ;!?」

思わず起き上がって携帯を強く耳に押し当てる。
しっかりと相手の声を聞き取るために。

「お前…何で……;!傷は;!?傷は大丈夫なのか;!?それに番号も…ッ;!何で俺の携帯…;!?」
『落ち着けって。…傷は、もう随分マシになった。高杉が治療したから。さっき目ェ覚めたんだわ。完全には塞がってないけど、命には支障ないって。番号は、ヅラに聞いた。お前の名刺もらったから。』
「……ぎ、銀時…」

説明されても実感がない。
本当にこれは銀時なのか?
あの時血を吐いて気を失った銀時…?

『……声、聞きたくて。』
「――あぁ…」
『…会いたくて。』
「――…俺もだ」

でも、確かにこれは。
耳に届くこの声は。

「銀時……」

愛しい、相手の声――

『ヅラが、逃がしてくれたんだ――今、お前がいた部屋の前にいる…俺を、運び入れてくれた部屋。』
「!!」

言葉と同時に立ち上がる。
山崎と沖田も立ち上がるが、沖田が山崎を制し、自分だけで土方の後を追う。

「すぐ行く――!!」

携帯は繋いだまま走る。
山崎の家からでは走っても10分はかかる。
タクシーを捕まえようとするが、こういうときに限ってつかまらない。

「くそ…ッ;!」
『…なぁ、土方…?』
「…っ、どうした…?」
『また、一緒に逃げてくれる、よな?』
「当たり前だろ!?」
『ずっと、一緒、だよな?』
「……当然だ!!」
『…うん…』
「……?」

ここでようやく気付く。

「銀時――…?」

銀時の声が震えている。

「どうした…オイ;!?」
『……い、っしょに…居てぇ、だけなのに……なんで、それができないんだろ…』
「!?」
『土方……』

土方の隣で見覚えのある車が急停車する。

「土方さん!さっさと乗ってくだせェ!!飛ばしますぜ!?」












何で。何で何で何で。

「勝手に逃亡するクセ、いい加減なおさねぇとなァ?銀時ィ…?」

この男は、俺にここまで。
何で俺に、こんな。

鉛管を咥えた男は、俺の目の前にソレを突き出す。

「お前が甘えるから。お前が俺から逃げようとするから。コイツはこんな目にあうんだぜェ?」

口から血を流す、長髪の男。
――俺をあの真っ白な部屋から、高杉の拘束から逃がそうとしてくれた、男。

「コイツ、俺の部下のくせにお前を逃がす手助けなんざしやがるからよォ。」

ふぅ、とめんどくさそうに煙を吐き出す。
相変わらず、笑みで歪む口元。

「安心しろ。まだ死んじゃいねェよ。…お前が帰ってくるなら、すぐ手当てしてやるさ。」

『くそ…ッ;!』

耳元からは土方の荒い息遣い。
もうすぐだったのに。
お前と一緒にいられる――そう思ったのに。

「…なぁ、土方…?」

どうして。

「また、一緒に逃げてくれる、よな?」

一緒にいたいだけなんだ。

「ずっと、一緒、だよな?」

それだけなのに。

「……い、っしょに…居てぇ、だけなのに……なんで、それができないんだろ…」

差し出される高杉の手を、見上げる。
俺にはそれを握り返すしか、できない――

「銀時!!!」






キキッ!と急ブレーキの音がする。
高杉の真後ろに止まった車。
助手席から土方が飛び降りてくる。

「てめぇが、高杉か」
「…あぁ、お前がヒジカタ、か。うちの銀時をたぶらかしている?」

高杉の手が銀時の襟を掴み、その軽い体を宙に浮かせる。
首を締め付けられて銀時がうめき声を上げた。

「悪いがコレは俺のもんでなァ?ヨソもんに手ェ出されちゃ迷惑なんだよ」
「銀時はそれを嫌がってる」

ジャキッと銃口を高杉に向ける。
それと同時に高杉のボディーガード2人も土方に銃口を向けた。

「銀時を離せ。じゃねぇとお前を撃つ。」
「その前にてめぇが撃たれるぜ?」
「そんなのかまわねぇよ。さっさと銀時を離せ。」
「王子様気取りか?似合わねぇな」
「お互い様だろ。いいから離せ」

ゆっくり引き金を押す指に力が入る。

「ッ…土方…ッ;!ヤメ…;!!」

次の瞬間、目の前が真っ白になった。

トイレに行きたい…;←何でココに書く。
20060622UP

 






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