伝えたい伝えたくない

人生うまくやるコツ。
たてまえと本音を使い分けること。
俺の場合、今の人生のほとんどがたてまえで構成されている。
以前は好きなようにやって好きなように生きていた、気がする。
でもそれってさ、自分の芯をさらけ出してるようなもんだろ?
否定とかされたら、モロにくるわけ。
だから俺は、相手との間に壁を1枚作っておく術を身につけた。
こうしておけば、いざというとき傷つかない。失わない。
俺って、天才。じゃない?

「そろそろはっきりさせようよ」
「…何を。」
「俺らの、関係。今後のこと。」
「……」

現在俺は甘味処でパフェをつついている。目の前には瞳孔を開かせた、真選組副長。現在の俺の恋人。
そして話している内容は、俺達の今後。
簡単に言えば、関係を続けるか否か。別れるか否か、だ。

話のきっかけは、まぁよくあることだった。

俺の恋人、土方十四郎は仕事に熱い、もとい、真選組命の、仕事人間。
そんな土方が何で俺なんかに惚れたのかは正直、判らない。
俺も付き合えって言われて拒否しなかった。正直、惹かれてた。
そんな俺も、今じゃ立派に副長にメロメロなわけで。
相手とは対照的に、熱は上がっていく一方だ。
そう、相手とは、対照的に。

「悪い。今日も仕事、夜中までかかる。」

1ヶ月ぶりに会おう、と約束していた日の夕方、あいつが持たせてくれている携帯に、そう連絡が入った。

「…悪い」
「もういいよ。わかった」
「…この借りは、後日返すから」
「前もそう言った。もういいから。切るよ?」
「…悪い」

アイツは謝るしかしなかった。こんなやりとり、もう何回目か知れない。
付き合ってもうすぐ1年。なのに、本当に、もう、何回目なのか。
そして、限界だろうか、と思ったのも、もう、何回目なのか。

「…限界だよ。土方。」

完全に回線を切った携帯に、小さく呟いた。

そんなある日、甘味処に来ていた俺の前に、もう何日ぶりかしれないぶっちょう面があらわれた。

「…よぉ」
「…どーも。」

久しぶりに会うというのに、何と色気のない挨拶。まぁ俺らはそんな元からそんな関係なんだけど。
”よくも約束を何度もすっぽかしてくれたな”とか”会えなくて淋しかった”とか、思うことは色々あったけど、全部、言葉にならずに、できずに消える。
黒い感情は、確実に膨らんでいく。

「今日仕事は?」
「今巡回中だ。たまたまお前の姿が見えたんで入った。」
「サボりなんだ?」
「…少しなら構わねぇよ」

そう言って照れをごまかすようにタバコをくわえる土方を、どうしようもなく愛しく思うのは、別に俺が変だからじゃないはずだ。誰だってそう思うはずだ。
でも、今の俺はそれを素直に受け止められるほどの余裕が無かった。

「そっか。なら話、しよ。」
「…話?」
「そろそろはっきりさせようよ」
「…何を。」
「俺らの、関係。今後のこと。」
「……」
「別れようか、土方」

相変わらず俺の手はパフェを突付くことを止めなかった。



軽く終わらせたい重い話。(何)
20060816UP







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