ムゲン8

それは、俺が10代半ばの、ガキのころ。






「寒ィと思ったら積もってやがる…」

そういえば今年一番の寒さだ、とTVが言っていた。
部屋の中にいるときから既に寒さを感じていたので、相当のものだ。

自分が住処にしているアパートは、町の中心地から3kmも離れていない場所にある。
両親は田舎に残してきた。今は一人暮らし。
義務教育を終えて即家を飛び出した。理由は、特にない。
ただ、あんなつまらない場所、世界にいると、自分がダメになりそうだったから。
何かをしたかった。何かと出会いたかった。
そのために家を出て、都心に住むことにしたのだ。
昼間は学校、夜はバイト。
成績はイイ方だったので、奨学金を貰って、何とか生活できている。
そんなギリギリの生活も、土方には十分なものだった。

かといって家を出たから、都会に出たから、やりたいことが見つかるというわけでもない。
毎日が同じように巡り、繰り返される。そんな生活に、正直飽き始めていた。

「コーヒー…タバコ…と」

今日は休日。
空になった冷蔵庫と、残り少ない趣向品を調達するために近所のスーパーに向かう。
一人暮らしの買い物はさほど多くない。
タバコは自販機で。年齢を聞かれる店では買えない。

1つの袋にまとめて家路へ向かう。
コートに手を入れて、肩を竦ませて歩く。

すれ違う人の寒いね、と言う声を何度も聞いた。

    そんな中の一人――

「…ッ」

誰かとすれ違いざまに、肩にドンッと何かがぶつかる。
ふらっと少し後ろに傾くが、すぐに体制を立て直した。

「何すんだちゃんと前見て歩け…ッ!!」

「ぁ、悪ィ…大丈夫か?」

喧嘩腰で、怒鳴ると同時に少し上から降ってきた声。
土方とは対照的に柔らかいその声。

睨んでやろうと向けたその目に、ソイツが写る。

冬の太陽を背負ったその顔は
影に隠れて真っ黒だった。


「ごめんな、急いでんだわ。」


でも、太陽の光を受けて輝く銀色の髪だけはやけに目に焼きついて。


「おい、早くしろ」
「ぁ、うん。今行く!」


俺は、暫くその銀色に目を奪われて動けなかった。

なんと、綺麗な。
なんと、輝いた、その色。


「んじゃ…ぶつかって悪かったな。」

軽く頭を撫でられる。
ソイツは、後ろから声を掛けた男に駆け寄って消えていった。



今から何年も前の冬の日――



土方の過去の思い出。
何故銀時を助けたいのか。その理由。
20051208UP


 






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