ムゲン7

自分の部屋を出た土方はそのまま走って、ある場所に向かっていた。






「…帰れ非常識ヤロー」
「おまっ…仮にも先輩に何だその口の利き方はァァァ!!」
「こんな朝早くに後輩を襲いに来る人間に言われたくないでさァ」
「誰が襲いに来るか!!!」

土方が頼ったのは後輩の沖田だった。

「とにかくここに置けや。そう長くじゃねぇ」
「宿代、高くつきますぜ?」
「先輩から金せびんな。っつーかお前店のナンバー2なんだから金はあんだろうが。」

慣れた動作でソファに座りタバコに火をつける。

最初はただ機嫌が悪かった沖田も、
土方が自分の家に転がりこむくらいの何があったのだろうかと思慮していた。

「土方さん。」
「…わーってる。…全部話す。」

沖田の疑問は当然だ。
土方は言われるまでもなく、自分がここに来た理由を話し出した。
土方の座ったソファの向かい側に座り、沖田は話を聞いた。

――路地裏で銀色の男に出会ったこと。
――その男の様子が変だったこと。
――”逃げるのは半日が限界”なのだということ。
――”怖いヒト”を呼び出したこと。
――逃げるように言われたこと。

全部話し終えると沖田が訝しげに土方を見上げる。

「…何かハードボイルドの映画のような内容ですねィ。作り話、ではないんで?」
「当たり前だろ。俺がンな作り話して何の得がある」
「まぁそうでさァね」

しばらく沈黙が続いて、ふと沖田が口を開いた。

「で、どうするんですかィ?」
「……決めたんだ」
「?」
「あいつを…助ける。たかすぎ、とか言うやつから、逃がしてやる。」
「…たった一度、世話した相手を、ですかィ?」
「ああ。」


――そうじゃない。本当は…


「あいつは…あのままじゃいけねぇ気がすんだよ。俺の考えてることは余計なことかもしれないが…少なくとも今のままじゃあいつは…壊れちまう、気がすんだよ。」


――俺は、あいつと…


「あいつを・・・助けてぇんだ」

「…女を本気で好きになったことのない土方さんが、男にご執心になるたァね。」
「ほっとけ」
「でも、本当に助けるのは、骨が折れると思いますぜ?」
「…何?」

何か知っているような態度の沖田にぴくっと眉をひそめる。

「…たかすぎ、って名前…」
「…ぁ?」
「麻薬取引で全国に名を馳せている男と、同じ名前ですぜ?」
「!!何・・・;?」
「単なる偶然ではないでしょう」
「……だろうな。」

裏の世界の人間なら、銀時が「殺される」と行った理由もわかる。
そういう人間達は大抵、人を殺すことをどうとも思っていないから。

「でもお前、何でそんなこと…」
「土方さんに盛る薬を物色するときにちょいと調べましてねェ」
「お前、俺に麻薬盛るつもりだったのかよ;!?」
「まぁそんなことはどうでもいいでしょ。」

しらっと言う沖田に怒りは収まらないが、今は高杉についてのことを知っておきたい。

「で、その高杉ってのの居場所はわかるのか?」
「さぁ。そこまでは。でも下っ端の連絡手段ならわかりますぜ。」
「そいつから当たるしかねぇか…連絡先よこせ。」
「…土方さん。」
「あ?」
「高杉を敵に回すってことは、少なくとももう歌舞伎町で生きては行けないってことになりますぜ?」

歌舞伎町には表の顔と裏の顔がある。
表は、男と女の世界。ホストやホステスの生きる華やかな世界。
裏は、麻薬・銃が横行する闇の世界。
表と裏は紙一重だ。裏で失敗すれば、もう表にすらいられない。逆は、あるのかもしれないが。

高杉を敵に回し、銀時を助けるということはすなわち、闇を敵に回すこと。
それは歌舞伎町を出ることと等しいし、たとえココを離れても絶対に安全だとは言い切れない。

「…それでも、俺は、行く。」
「…土方さん…どうしてそこまで?」

普段、何事にも”執着”というほど1つのことにのめりこんだり、他人に関わろうとしない土方が、ここまで思うのを、沖田は見たことがない。
それほどまでに、その銀時という人間に魅力があるのか。それとも――

「…俺にもわからねぇ。でも、あいつは…助けたい。」


――昔、俺は、あいつと…


「…わかりました。」

頷くと沖田は携帯を取り出し、ニッと笑ってこう言った。

「俺も、付き合いますぜ。その銀時とかいうお人に、会ってみたいんで。…土方さんがゾッコンになる、その人に。」



ほとんど一気に書きあげました。
もう感情表現とか状況表現とか何もない小説に…;
20051127UP


 






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