ムゲン21

何だろう。何で俺こんなことしてんだろう。
体が勝手に動くんだ。視界はこんなにはっきりしているのに。

俺の手が次々人の命を奪っていく。
――この感覚を、俺は知っている。
初めてじゃない、この感覚。
でも、覚えていたくなかった。だから記憶を消した。
覚えていたら、自分がどうにかなっちまいそうだったから。

ここは、どこだっけ――
そうだ、俺、土方と海見てたんだ。
その途中、クスリが切れて…病院に連れてきてもらったところまでは覚えてる。
その後…どうしたっけ。
土方は?どこ?

シュンッと音がして、扉が開く。
俺の目線もそちらに向けられる。因みに手には、看護婦から奪った医療用のハサミを握って。
開いた扉から、まだ何とか息のある人間が這うようにして逃げ出して行く。
それとは逆にこちらに向かってくる人間。

――土方、だ。

「おい。銀時。てめぇ何やってんだよ」

土方の後ろで扉が閉まる。それと同時に土方は、手にしていたカードキーをへし折った。
あーあ…どうすんの。それじゃもう外出られないじゃん。

「お前を止めりゃ、誰かが扉を開けに来る。――止められなくても、お前はここから出られない」

なるほどね。最悪、自分以外の奴は殺させないってことか――相変わらず優しいよね。

「銀時。もうよせよ。イヤだろ?こんなの。」

そりゃ嫌だよ。

「なら、止めろよ」

止められないんだよ。勝手に体が動くんだ。

「…ほら。こっち、来い。」

土方が腕を広げる。俺の好きな笑顔を向けてる。

「銀時。」

ダメ。
行ったら
――殺してしまう。

「死にはしねぇよ。…誰が天パに殺されるかってんだ。」

何それ。ムカつく。

「俺は、お前を、守るって決めてんだよ。だから、まだ死なねぇ。だから、来い。」

言ってることがバラバラだってば。

あぁ、ほら…体が勝手に動いてる。
ガラスの向こうから、「土方さん!逃げてくだせェ!!」って声が聞こえる。
そうだよ。逃げろよ。じゃなきゃ――

殺してしまう。

「土方さん…;!!」


































「気持ち良かったろォ?銀時ィ」
「……」
「血ィ吐いて倒れてくアイツらの面見たか?傑作だなありゃ。」
「…ッ、何であんなこと、させたんだよ…;!!俺は…あんな…ッ;!」
「あぁ?そんなの、俺が楽しむために決まってんだろ。」
「な…ッ;!!」
「――銀時。お前はな、もう死んでんだよ、あの雪の日に。その体は頭の先から足の先まで細胞1つ残らず俺のもんだ。だから俺はお前で遊ぼうが、いつ殺しちまおうが、自由なんだよ。」
「た、かすぎ…;!」
「お前は、ただ生きてりゃいいんだ。何も考えず、生きてるだけでいい。」



































「――ぎ、」

もう嫌だ。

「……銀時ィィィィ;!!!」

嫌だ。嫌だ。嫌だ。
これ以上無くしたくない。
もう何も失いたくない。

「銀時ッ;!!バカお前…ッ;!!何やってんだ!!!」

土方に抱きとめられる。
胸が熱い。口の中も、ぬるぬるしてる。

ああ、そっか。
俺――自分を刺したんだ?
体が言うこときかないのに、結構頑張ったんじゃね?俺。

「そんなことしろって言ってねぇだろ;!!!何してんだよ;!!!」
「ひ、じか…ッ、」

ごぼっと口から血が溢れる。
あー…ヤベ…ハサミ、コレ結構深くまで刺さってんじゃねぇ?
痛いとか感じないってことは…もう死にかけ?俺。

「ひじか、た……おれ、おもい…つ、いた…」
「バカ…ッ;!喋らなくていい…;!!」
「やりたい、こと…ある……おれ…お前と、」
「ぎんと…」
「いっしょ、に……ジジ、ィ…に…なり…ぃ……」

どんどん視界が暗くなる。
土方の顔が見えなくなっていく。

       あぁ、カミサマ、頼むよ――
       もう少し、コイツと一緒に居させて。

願ってもいいなら、コイツと
ジジィになるまで、一緒に居させて。


こういうドロドロシリアスを考えるのが好き。
20060603UP


 






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