ムゲン20

「ぎん…とき……;?」

目の前の光景を、俺はただ見ているしかなかった。
こんな銀時を、俺は知らない。
いや、情報としては知っていたはずだ。
しかし、聞くのと見るのとでは全然違う。

銀時の周りにいた看護婦が血を吐いて倒れていく。
壁に激しく後頭部を打ち付けられ、白目を剥く者。
点滴用の棒を顔面に叩きつけられ、床に伏す者。
注射を目に貫かれて悲鳴を上げる者。

その中心で、銀時は
――笑っていた。

こんな銀時を、俺は知らない。

「高杉が銀時に与えるクスリには効能で大きく分けて、2種類ある。銀時の体調を管理するものと、試験的に与えているものだ――普段は前者のクスリしか飲ませていないが…コレは、後者のクスリの影響だ。」
「…試験的…だと?」
「昔…銀時は新種のウィルスに体を蝕まれていた。高杉に出会う前だ。そのウィルスはまだ見つかって間もなく、クスリなどなかった――試験的なものしか、な。高杉は、そのクスリを銀時に与えた。ウィルスはすぐ消滅したが…高杉は、その後も銀時を、クスリの効果を試す道具として使った。」
「――!!」
「高杉が銀時を拾ったのは、銀時を助けたかったわけじゃない。こんな風に…新薬の効能を試すため、というのが本心だったんだ…」
「…酷ェ…最低だ…ッ」
「このクスリは、幻覚作用と幻聴作用があるらしい。俺も詳しく知っているわけじゃないが、一度このクスリの効果を銀時で試したときに高杉から聞いたことがある……」

『最高だったぜェ?周りが血の海になっても、笑ってやがんだよ、銀時の奴。もっと、血を、ってよォ…』

「このクスリは、他のクスリが切れたときに効果が出る。今まで大丈夫だったのも、他のクスリが効いていたせいだろう。」
「…どうやったら、止められんだよ…ッ!こんなの、銀時自身望むはずがねぇ…!!止めさせられねぇのかよ…;!!」

ガラス越しには、まだ銀時の暴走シーンが繰り返されている。
逃げ回る看護婦をさして慌てもせずに追いかける。
狩りを楽しむ、野獣のように。
ICUの扉は、セキュリティー上、カードキーでのみ開閉できるが、中に入った看護婦のうち、1人にしか、そのカードは渡されていない。その看護婦は、既に床に伏している。ICUは密室の、地獄だった。もちろん、ガラス越しに見ているこちら側の人間が、そんな地獄絵図を見て、ICUに入ろうなどと思うはずも無く――

「桂!!何か……止める方法は…ッ;!」
「…高杉でなければ、わからない。」
「高杉高杉って…!!…もういい!!」

医者に詰め寄る。

「おい。ICUのキー貸せ。アイツを、止めてくる。」
「!?土方さん何考えてんですかィ;!あんな状態の旦那、止められるわけ…;!」
「止めるっつったら止めんだよ!!黙ってろ総悟!!」

医師から奪い取るようにキーを受け取った。

「銀時…今、止めてやる。」


どうやって止めるの?(ぇ)
20060603UP


 






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