ムゲン17

「海だァァァァァァ!!」

海岸傍に車を止めると、すぐに銀時が飛び出して海に駆け出していく。

「あっ、ちょ……ったく、子供かアイツは;」

呆れたようすで銀時を見つめる。
膝まで海につかり、頭の上に海水をぶっかけている銀時は、本当に子供のようだ。
海は初めてだと言っていた――海なんて、車で少し行けばこうしてたどり着く距離だ。
なのに、本当に一度も見たことがなかったのだろうか。

「多串くーん!こっちおいでよー!」
「多串じゃねェェェ!!つか多串って誰だよ!?」

怒鳴りながら銀時の元へ近づく。
頭から海水を被ったせいで銀時は全身ずぶぬれだ。

「ぁー…着替え無いんだからちょっとは考えろよ…」
「多串くんは細かいねぇ…A型?」
「そういうお前はO型だろ。」
「さぁ?調べたこと無い。」
「なら今度調べさせる。」
「ヤダ。注射嫌い。」
「…ガキかてめぇは。」

濡れた銀時の髪をわしゃわしゃと撫でて水気を払う。
気持ちいいのか銀時は目を細めてじっとしていた。

「…なぁ。銀時。…お前、これからどうしたい?」
「ん?」
「…俺は、確かに俺の勝手でお前を連れ出しちまったけど…お前がやりてぇこと、行きたい場所…あるなら全部叶えてやりてぇと思う。」
「……。」
「何でも言え。」
「……さんきゅ。でも、何もねぇわ。…俺はお前といれるだけで、十分、かなり、すっげぇ、満たされてるし。これ以上望んだら、あとが怖い。」

俯き加減で、小さく笑う。
その表情は土方を少し不安にさせたが、無理に願いを聞きだすのもどうかと思い、それ以上の言葉は留めた。





思えば、このとき、多少無理やりにでもコイツの気持ちを聞き出せば良かったんだ。
たとえ、何も出来なかったとしても、コイツを救うため、自分が犠牲になるくらいのことは出来たのに。




次回は過去話。
20060428UP


 






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