ムゲン16
「ナメんじゃねぇぞ」
何が嬉しかった、だ。
何が助けに来てくれた、だ。
「俺は、お前のために来たンじゃねぇんだよ。」
俺が、会いたかったんだ。
俺が、助けたかったんだ。
「銀時――俺はぶっちゃけ、お前の気持ちを優先してやれない。俺がココに来たのは確かにお前を高杉から助けるため、だ。俺自身のために、な」
「…土方――」
「だから、連れて行く。」
ガチャ、と銃を構える。銃口の先は桂に向けて。
「…やれやれ、聞き分けの悪い犬だな。」
「何だと?」
「お前では銀時を救えぬ。ココから連れ出したところで――銀時は高杉ナシでは生きられ…」
「イイよ」
桂の言葉を遮って、銀時が声を上げる。
「イイよ、行こう。土方。」
「銀時…!」
思わず桂が銀時の正面に立って腕を握り締めた。
「いいんだ、ヅラ。こんなに言われてまで断れるほど、俺は…」
「――しかし、銀時;」
「土方ー。行こう?」
桂をかわすように土方の傍に歩み寄る。
「…銀時」
「いってきます、ヅラ。」
にこ、と笑って軽く手を振る。
その笑顔は桂にしか見えなかったが、今にも消えてしまいそうで、悲しげだった。
「なぁ、ドコ行くんだ?」
高杉の屋敷から銀時を奪った後、乗ってきた車の後部座席に土方と銀時が乗り込み、沖田が車を運転して制限ギリギリで高速道路を走っていた。
後部座席では銀時が土方の膝に頭を乗せ、いわゆる膝枕でじゃれあっている。
元来、他人の幸せ―特に土方の幸せが、大嫌いな沖田はバックミラーでそんな2人をウザそうに見ながら小さく舌打ちをしていた。
そんな沖田の機嫌に気付きもせず、銀時がふと運転席に目をやって沖田に尋ねる。
「――ドコ行くんですかィ?土方コノヤロー」
「ぁ?お前決めずに走らせてんのかよ」
「……つまり何も決まってないってこと??」
2人のやりとりに予定も何もないのだと知ると、ぁ。と思い出したように提案した。
「俺、海行きたい!1度も見たことねぇんだよなぁ〜」
「マジでか。」
「今時いるんですねィ。そんな人が。」
「いつの時代の人間だよ」
「戦時中みたいでさァ」
「……泣くよ、俺」
希望を言っただけなのにこんなに非難されるとは。半泣きになりながら頬を膨らませる。
「嘘だっつの。…総悟。」
「わかってまさァ。海、ですねィ。」
「行ってくれんの?!やったぁ♪」
少しの間(!)は幸せモードです〜。
200603301UP
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