ムゲン15

「…銀時。会いたかった」
「…俺も。土方クン。」

もう長く会っていなかった気がする。いや、実際まともに会ったのはたった一度、しかも数時間の間だけだが。
暫く抱きしめ、銀時の存在を自分の胸に刻み込む。

「…助けに来た。高杉ってやつから、お前を。」
「…うん。」

体を離し、お互い顔を見合わせる。
顔を見た途端、何だか恥ずかしくなって思わず顔をそらした。
そんな土方を見て、銀時は軽く笑う。

「それにしてもよくここがわかったよな?もしかしてすっげぇ調べちゃった?俺助けるために?」
「…まぁ、な。」
「こんなに誰かに必死になった土方さんは珍しいですぜ?」

土方の後ろから沖田がひょいっと顔を出す。

「あれ?2人で来たんだ?…えーと。」
「沖田でさァ。沖田総悟。土方さんから話は聞きました。銀時の旦那。」

くすっと笑って銀時に軽く会釈をする。
銀時も返すように小さく頭を下げた。

「…それにしても何もない部屋ですねィ。こんな部屋で生活してるんで?」

見渡した部屋は真っ白で、家具など殆どない。部屋の中央に据えられたベッドだけ、だ。
壁もベッドも床も真っ白。
こんな部屋にいたら気がおかしくなりそうだ。
銀時は「まぁね」と小さく呟いた。

「ンな呑気な事言ってる場合か。高杉にバレないうちにココを出るぞ」
「…ぁ。ちょいたんま。」
「ぁあ?」
「……あのさ。助けに来てくれたのは嬉しいんだけど…俺、ココから出られないんだわ。」
「…何だと?」

せっかく助けに来たのに、しかもこうして手の届くきょりにいるのに、何故出られない?
窓は開いている。高杉にバレているわけでもない。

「…どうして。」
「理由は、言えない。だけど、ココからは出られない…」

ぎゅっと土方の手を握って笑ってみせる。

「来てくれてさんきゅ。超感謝してる。…でも、ごめん」
「………」
「…旦那。理由は言えない、って何故ですかィ?」
「それは…」
「”ココから出られない理由”は言えなくても”理由を話せない理由”は話せるでしょう?」
「……まいったなぁ…」

ボリボリと頭を掻く。

「それは俺から説明してやろう」
「!!」

突如廊下に繋がる扉が開かれた。
3人の前に現れたのは長い黒髪が綺麗な、着物姿の男だった。

「…ヅラ…」
「ヅラではない、桂だ。」
「……」

土方と沖田が身構える。
それを制止するように桂は溜息を零して手を開いた。

「丸腰だ。案ずるな。俺は完全にお前達の敵というわけではない。」
「…何だと?」
「俺は、桂小太郎という。お前達は?」
「……」

身構えていた体勢を元に戻す。
しかし完全には信用していないまま、手はいつでも銃を構えられる位置に据えて、桂と名乗る男を睨みつける。

「…土方。」
「沖田。」
「土方……あぁ、そうか。お前が…」

クスッと笑みを零し、桂がちらりと銀時を見る。
見られた銀時はバツが悪そうに目を空に向けた。

「…?何だよ」

そんな2人に土方が訝しげな表情をした。

「いや、こちらの話だ。…さっきの話だが…土方とやら、悪いがここはこのまま帰ってはくれぬか。」
「…断る、といったら?」
「…まぁそう言うだろうな。しかし、今銀時を高杉から引き離すわけにはいかないのだ。」
「どうして」
「…遠まわしな言い方になるが、”お前では無理”なのだ。」
「…何?」
「銀時は高杉に――」

「ヅラ」

銀時が強い声音で桂の言葉を遮る。

「…それ以上、言うなよ。」
「……銀時」
「とにかく、さ。俺、ココからは出ない。…土方の気持ちは嬉しかったよ。危険を犯してまで助けに来てくれた。感謝してる。でも――」





「…ナメんじゃねぇぞ」


ついさっき風呂場でこの話の結末を考えていました。
ハッピーエンドにしようかどうか悩むところです。
20060324UP


 






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