ムゲン13

「高杉社長の仲間の何人かが車に近づいたんですよ…」

――『高杉さーん。何スかこいつー』
――『新しい仲間ですか?…にしちゃなよっちいなオイ』

「で、銀時さんを車から引きずり出して…」

――『あ?何だこいつ。熱あんじゃねぇの?』
――『体めちゃくちゃ熱ィじゃん。』

「で、高杉社長が、笑って言ったんです――」

――「あんまり近づかねぇほうがイイぜ?」

「”あんまり近づくと”――」

――「噛まれるぜ?」
































「はぁ〜…食った食った」

桂のぜんざいをたらふく食べた後、また一人真っ白な部屋に残された銀時は、満腹の腹をさすりながら天井を見上げ寝転んだ。

「寝よっかな〜…」

目を閉じる瞬間見えるのは。

「……やっぱやめよ」

首を振って起き上がる。

目を閉じる瞬間見えるのは、真っ赤な世界。
自分の目の前で倒れる、息をしない人間。
そして倒れている人間の血で真っ赤になった自分の体。
傍で笑う高杉。

自分を奪い去ろうとする者を、高杉はことごとく始末してきた。
しかも自分の目の前で。
銃を握って笑う高杉。
そして一言こう言うんだ。

――お前は俺が守ってやる。

うそつき。
こんなの守るって言わねぇよ。
確かに高杉のおかげで、吐血の原因だった病気は治まった。
でも、俺を囲って、邪魔する人間は消していくなんて、そんなの嬉しくもなんともない。
それは、ただ、高杉の黒い独占欲を満たすためのもの。

「……嬉しくないよ、そんなの。」



















――「噛まれるぜ?」

「そこからは、生き地獄のような風景だったと、言ってました。」
「生き、地獄;?」
「銀時さんは、クスリをやっているらしいんです。」
「クスリ…?」
「麻薬。高杉の仕入れる商品のクスリですよ。もちろん、麻薬。」
「…!マジでか…」
「さすがにクスリの種類まではわからなかったですけど…何種類かやっているようで――で、そのクスリの中にはやっかいな副作用のものが多いらしくて…」
「副作用?」
「その中の1つが、幻覚症状です。どんなものを見るのかはわかりません。でも、”その時の”銀時さんには周りの人間が、自分の敵に見えていたんだと思います」
「…敵…」
「――高杉社長が”噛まれるぜ”と呟いた直後、銀時さんは一番近くにいた人間の首を、落としたそうです。握っていたナイフで。」
「…ッ;!!」
「瞳孔が開いて――自我をなくしていたと、聞きました。クスリのせいか、力の加減もなく…。そうして、車の傍にいた高杉社長の仲間はナイフで次々、殺されていったそうです。」
「……銀時、が…殺した、ってのかよ…?」
「――はい。周りの人間の血で真っ赤になった頬を舐めている姿はケモノのようだったと…」
「――!」
「狂った銀時さんを止められるのは、高杉社長だけ、らしいです。」

――「銀時。」

「名前を読んだ途端、電源が切れたみたいにその場に崩れ落ちたらしいです。…僕が思うに、きっと、高杉社長は、図ってやったんじゃないですかね。」

山崎の話にショックを受けた土方は暫く黙り込んでいた。
しかし、山崎の考えに同調するように、小さな声で返す。

「…だろうな。ナイフなんか握ってたのも、高杉が握らせた――幻覚症状のあるクスリを事前に飲ませたのも、高杉なんだろうからな。」
「最低でさァ…高杉の野郎…」
「そんなの――あんまりじゃねぇか…意思なんか関係なく、人を殺させる…最低じゃねぇかよ…ッ!!!」

握り締めたこぶしが真っ白になる。
――許せない。高杉。

「…行く。もう十分だ。」
「一応聞きますけど…どこに行くんですか;?」
「決まってんだろ。高杉ンとこに行って、銀時を奪う。」

立ち上がり、玄関に向かう土方に、山崎は慌てて声をかけた。

「土方さん…ッ!あの…」
「…なんだ」
「…俺、会社辞めてきたんで。もう未練はないですから。思う存分やっちゃってください。」

笑顔を見せる山崎。
土方は、一瞬唖然とした顔を見せたが、すぐ、ふっと笑って返した。

「じゃあクラブの店長に、バーテン復帰、頼んどかねぇとな」



小説ってむずかしい。
20050212UP


 






SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送